沖縄の定番土産「ちんすこう」─ 金楚糕の由来、作り方、店の見分け方

ちんすこうとは、小麦粉・砂糖・ラードを主原料に焼き上げる、沖縄の伝統的な焼き菓子です。那覇空港や国際通りの棚でよく見かける定番土産ですが、ルーツは琉球王朝期の宮廷菓子にさかのぼります。2024年8月27日には菓子類として国内初の地理的表示(GI)に登録され、漢字では「金楚糕」「金楚餻」と記されます。
この記事の要点
- 主原料は小麦粉・砂糖・ラード。2024年8月、菓子類として国内初のGIに登録されました
- ルーツは琉球王朝期に首里城内で作られた宮廷菓子。いまの焼き菓子の形になったのは1908年頃です
- 漢字は金楚糕/金楚餻。由来は「珍しい菓子」「高価な菓子」の二説
- 新垣の店は本家・本舗・カミ菓子店など複数あり、創業年は店ごとに違います
王朝の菓子が、いまの焼き菓子になるまで
琉球王朝以来の菓子は50種類以上あり、儀式や行事に用いられてきました。代表的なのが、金楚糕(チンスコウ)と光餅(クンペン)です。中国の影響が色濃い系統で、餡を包むくんぺんとは別物です。餡のない焼き菓子がちんすこう、ごまをまぶした皮でピーナッツ餡を包むのがくんぺんです。違いはくんぺんの記事で詳しく書いています。
琉球菓子は王家の接待や祭事に使われ、廃藩後に市中へ下りていきました。琉球王国時代後期の19世紀、王家の料理人・新垣淑規が冊封使をもてなすために菓子の作り方を学び、当時つくっていた中国菓子の蒸しカステラのようなものを焼き固めたものが、のちのちんすこうになりました。新垣家は明治以降、一族で販売を始め、庶民にも広まりました。
王朝最後の宮廷料理人とされる新垣親雲上淑規が、首里城内で作っていた琉球独自の伝統菓子をベースにし、子孫の新垣淑康が1908年、もともと蒸し菓子だったものをレンガ窯で焼き、一口サイズの細長い形にして販売しました。かつては菊の花の形で、食べやすい細長い形に変わりました。
案内文では「首里城の料理座」と書かれることがあります。呼び方は「首里城内」「王家の料理人」「王府の包丁役(料理方)」などがあり、「料理座」という組織名で揃っているわけではありません。
「金楚糕」の読み方と、由来の二説
GI登録の名称は「ちんすこう」「Chinsukou」「金楚餻(チンスコウ)」「金楚糕(チンスコウ)」です。店によっては「金楚餻」と書きます。
表記には「珍楚糕」と「金楚糕」の二説があります。「楚糕」は菓子を意味し、お祝いなど特別な席でしか食べられない珍しいものだから「珍楚糕」、王族や貴族だけが口にできる高価な食べ物だから「金楚糕」、という説明です。黄金色に輝く、ほどける口当たり、といった一字ずつの当て方は、由来の公式な説明ではありません。
小麦粉、砂糖、ラード。豚の脂が食感をつくる
伝統的な配合は、小麦粉・砂糖・ラードの3つです。本家新垣菓子店でも、小麦粉、上白糖、ラードだけを混ぜて形をつくり、オーブンで焼きます。GIの生産方法も、穀粉、砂糖、ラード(ラード由来の油脂を含む)を主原料とし、混ぜて形をつくり焼きます。果肉や果汁、チョコレートなどのフレーバー、焼いたあとのコーティングや浸漬も認められています。
ラードを使う理由は、沖縄の養豚と「豚を余すところなく食する」文化に結びついています。オレイン酸が多く酸化しにくいラードが、クッキーやビスケットとは違うコクと風味を生みます。豚肉を無駄なく使う暮らしは沖縄の豚肉文化の記事でも触れています。
市販品では、ショートニングを加える例もあります。南風堂の雪塩ちんすこうの原料は、小麦粉、砂糖、ラード、ショートニング、宮古島産の食塩です。老舗の3原料だけ、という前提で棚を見ると、店ごとの違いが分かります。
新垣の店は、一軒ではない
「創業200年の新垣ちんすこう」とまとめてしまうと、店を取り違えてしまいます。新垣の名を継ぐ店は複数あり、創業年も役割も違います。
新垣カミ菓子店は「伝承二百年」を掲げ、約200年前に王府の包丁役だった新垣親雲上淑規を開祖とします。店そのものの再開は1949年、戦後に新垣カミが首里赤平で菓子店を開いた年です。一般への普及は廃藩置県後です。住所は那覇市首里儀保町2-13、営業は9:00〜17:00、日曜定休です。
本家新垣菓子店は、那覇市首里赤平町1-3にあります。1908年(明治41年)創業とする紹介が多く、手作りで品切れしやすいため、事前予約しておくと安心です。営業は10:00〜19:00(日曜は17:00まで)、土曜定休です。時間は変わることがあるので、事前に店でお確かめください。
空港や土産店でよく見る「新垣ちんすこう」は、有限会社新垣菓子店(新垣ちんすこう本舗)の商品です。1932年(昭和7年)10月20日、那覇市久米で本家から暖簾分けして創業し、会社設立は2000年、本社は那覇市首里寒川町、工場は南城市玉城です。さむかわ店とたまぐすく店を営業しています。最新の店頭情報は、店舗でお確かめください。
黒糖、ごま塩、雪塩。味の名前は店の商品名
プレーン以外の味は、店ごとの商品名として見た方がわかりやすいです。
北中城村の名嘉真製菓本舗(創業1973年)では、プレーン、黒糖、紅芋、パイン、ココナッツ、屋我地島の塩、ごま塩、アーサ、モリンガなどがあります。黒糖は「黒糖のコクを生かした深み」、ごま塩は「黒ゴマの香ばしさと塩気」が持ち味です。「海塩」「ごま塩」は一般名称のように見えますが、中身は屋我地島の塩や黒ゴマを使った、この店の配合です。
「雪塩ちんすこう」は、南風堂が2005年に発売した商品名です。宮古島産の雪塩を伝統的なちんすこうと組み合わせた商品で、雪塩、雪塩ミルク風味のほか、詰め合わせではプレーン、チョコチップ、抹茶も並びます。塩味のちんすこう全般を指す言葉ではありません。
お茶請けとして勧める店もあります。名嘉真製菓は黒糖を「お茶受けに最適」としています。コーヒーに浸す食べ方は、近年の紹介や「コーヒーに合う」と名づけた商品で見られますが、王朝期からの作法というわけではありません。
ちんすこう以外の甘味は、沖縄スイーツ3選や御菓子御殿の紅いもタルトでもまとめています。琉球菓子と日常のおやつの違いは、十円饅頭の記事が参考になります。
どこで買うか、日持ちの目安
旅先では、那覇空港と国際通りの土産店が一番出会いやすい場所です。首里で本家やカミ菓子店を訪ねる、南城市のたまぐすく店や北中城の工場直売で買う、通販で取り寄せる、という選択肢もあります。本家は予約しておくと安心です。カミ菓子店と名嘉真製菓は、公式サイトで営業を案内しています。店の定休日や臨時休業は変わりやすいので、訪問前に公式か電話でお確かめください。
賞味期限は商品ごとに違います。南風堂の雪塩ちんすこうは製造日から70日、わしたショップが扱う名嘉真製菓の首里城デザイン小袋は製造日から120日です。保存は直射日光と高温多湿を避ける表示が一般的です。個包装でも開封後は湿気で食感が落ちやすいので、箱に書かれた期限と保存方法を見てから選ぶと安心です。
| 店・商品 | 内容 |
|---|---|
| 新垣カミ菓子店 | 伝承二百年。店の再開は1949年。首里儀保町、9:00〜17:00、日曜定休 |
| 本家新垣菓子店 | 1908年創業とする紹介が多い。首里赤平町。手作りなので予約しておくと安心です |
| 新垣ちんすこう本舗 | 1932年に本家から暖簾分け。南城市に工場 |
| 名嘉真製菓本舗 | 1973年創業。黒糖・ごま塩・屋我地の塩など |
| 南風堂 雪塩ちんすこう | 2005年発売。賞味期限70日 |
営業時間、定休日、在庫、賞味期限は変わるので、買う直前の表示を優先するのが安心です。
まとめ
ちんすこうは、小麦粉・砂糖・ラードで焼く沖縄の伝統焼き菓子です。王朝期の首里城内の宮廷菓子をルーツとし、明治以降に市中へ広がり、2024年には菓子類として国内初のGIになりました。漢字「金楚糕」の由来は一つに定まっておらず、新垣の店も本家・本舗・カミ菓子店など複数あります。「雪塩ちんすこう」は南風堂の商品名です。空港や国際通りで手に取りやすい一方、首里の手作り店は予約が必要なことがあります。箱の期限と原材料を見て選ぶと、旅の土産としても家のお茶請けとしても扱いやすい菓子です。
参考資料・出典
- [1]農林水産省「ちんすこうをはじめとする農産物・加工品4産品を、地理的表示(GI)として登録」:2024年8月27日登録、菓子類で国内初。
- [2]地理的表示産品情報発信サイト「ちんすこう」:名称(金楚糕・金楚餻)、首里城内の宮廷菓子をベースとすること、1908年の焼成、主原料、形状の変化。
- [3]沖縄県「沖縄の伝統的な食文化の保存・普及・継承事業」:金楚糕(チンスコウ)、光餅(クンペン)、菓子が50種類以上。
- [4]農畜産業振興機構「沖縄県の郷土菓子」:19世紀の王家料理人、蒸し菓子を焼いた経緯、珍楚糕/金楚糕の二説。
- [5]首里城公園「首里城茶屋」:王朝期からの菓子であること、菊型から細長い形へ。
- [6]新垣カミ菓子店「About」:開祖・新垣親雲上淑規、包丁役、伝承約200年、1949年の再開。
- [7]樂園百貨店「本家新垣菓子店のちんすこう」:小麦粉・上白糖・ラード、手作り、金楚餻の表記。
- [8]農林水産省「第155号:ちんすこう」:GI登録の概要とラードの説明。
- [9]スーパーマーケット・トレードショー 出展商品「雪塩ちんすこう」:原材料、賞味期限70日。
- [10]新垣カミ菓子店:伝承二百年、店舗情報。
- [11]まっぷるウェブ「本家新垣菓子店」:住所、営業時間、予約推奨。
- [12]新垣ちんすこう本舗「会社概要」:創業1932年、本家からの暖簾分け、南城市工場。
- [13]名嘉真製菓本舗:1973年創業、黒糖・ごま塩などの味。
- [14]南風堂「雪塩ちんすこう 15周年」:2005年発売、宮古島産雪塩。
- [15]南風堂「雪塩ちんすこう大」:賞味期限70日。
- [16]問屋さん「珍品堂のコーヒーに合うちんすこう」:コーヒー風味の市販品があること。
- [17]わしたショップ「名嘉真製菓 首里城デザイン ちんすこう」:賞味期限120日、4種の原材料。
公開資料は2026年10月31日に確認して編集しました。
よくある質問
- Q. ちんすこうとはどんなお菓子ですか?
- 小麦粉・砂糖・ラードを主原料に焼き上げる、沖縄の伝統的な焼き菓子です。クッキーに近いサクサクとした食感と口溶けが特徴で、農林水産省は2024年8月27日、菓子類として国内初の地理的表示(GI)に登録しました。餡は入りません。
- Q. ちんすこうの漢字と由来は何ですか?
- GI登録の名称は「金楚糕」「金楚餻」です。表記には「珍楚糕」と「金楚糕」の二説があり、「楚糕」は菓子を意味します。特別な席でしか食べられない珍しい菓子だから「珍」、王族・貴族向けの高価な菓子だから「金」、という説です。黄金色や口当たりを一字ずつ当てた説明は、由来の公式な説明ではありません。
- Q. 新垣ちんすこうは創業200年の1軒ですか?
- 1軒ではありません。新垣カミ菓子店は、約200年前の王府包丁役・新垣親雲上淑規を開祖とする「伝承二百年」を掲げ、店の再開は1949年です。本家新垣菓子店は1908年創業とする紹介が多く、新垣ちんすこう本舗(有限会社新垣菓子店)は1932年に本家から暖簾分けしました。店ごとに創業年が違います。
- Q. ちんすこうはどこで買えて、賞味期限はどのくらいですか?
- 那覇空港や国際通りの土産店、首里や南城市などの直営店、各社の通販で扱います。賞味期限は商品により、南風堂の雪塩ちんすこうは製造日から70日、名嘉真製菓の一部詰め合わせは製造日から120日です。直射日光と高温多湿を避け、開封後は早めに食べきると安心です。


