琉球王朝ゆかりの伝統菓子「くんぺん」──ごま香る沖縄の銘菓

くんぺんとは、ごまをまぶした皮でピーナッツ餡を包んだ、沖縄の伝統的な焼き菓子です。 沖縄のお菓子売り場で、ひっそりと昔ながらの存在感を放つお菓子で、派手さはないけれど、琉球王朝の時代から県民に愛され続けてきました。
この記事の要点
- ルーツは中国から伝わった菓子。漢字では「薫餅」「光餅」とも書く
- 王朝時代は冊封使をもてなす高級菓子で、琉球王朝御用達と伝わる
- ちんすこうとの違いは「餡を包んで焼く」こと。のー饅頭は蒸し菓子で別物
- 高級品だったくんぺんへのあこがれから、庶民向けのタンナファクルーが生まれた
中国から渡った「光餅」が、琉球王朝お墨付きのお菓子になるまで
くんぺんのルーツは、中国から伝わった菓子にあると、首里の老舗は説明しています。漢字では「薫餅」と書くことが多く、店によっては「クンペン」とも表記します。
新垣カミ菓子店は「伝承二百年」を掲げ、琉球王府の包丁役だった新垣親雲上淑規が、中国から入ってきた菓子に日本の技術や近隣諸国の製法も取り入れて琉球王朝菓子を作り上げた、と紹介しています。石垣島の宮城菓子店は、薫餅を琉球王朝御用達菓子として献上されていた伝統菓子だと案内しています。進貢船や冊封使の往来とともに伝わった、という説明は店によって表現が異なり、公式ページで年次まで一つに定まっているわけではありません。
呼び方も「くんぺん」「こんぺん」「コンペン」とゆれがありますが、ごまをまぶした焼き菓子にピーナッツ餡を包む点は共通しています。
王朝菓子の中のくんぺん――冊封使をもてなした一品
沖縄県がまとめる伝統的な食文化の解説では、琉球王朝以来の菓子は菓子職人によって作られ、50種類以上の多様さを持ち、それぞれ儀式や行事の際に用いられてきたとされています。その代表格として挙げられるのが、金楚糕(チンスコウ)や光餅(クンペン)など、中国の影響が色濃く残る菓子です。
くんぺんは、中国から訪れた冊封使の接待や歓待の席に供される高級菓子だったと伝えられます。王朝期には米粉を皮に使ったり、卵黄だけで衣を作ったりしたともいわれ、王国の最高位の神女である聞得大君(きこえおおきみ)は黒胡麻餡のくんぺんを供えたという話も残ります。宮廷の菓子であると同時に、祭礼や法事のお供えにも用いられてきたところに、くんぺんの格式と、暮らしへの近さが表れています。
香ばしいごま×ピーナッツ餡。お供えにも、おやつにも、茶菓子にも
そんなくんぺんのおいしさの秘密は、なんといっても「皮」と「餡」のハーモニー。外側は小麦粉と砂糖、卵などで作った生地に、香ばしく煎ったごまをたっぷりまぶしています。中にはコクのあるピーナッツ餡を包み込み、じっくりと焼き上げます。
材料は基本的に、小麦粉、砂糖、鶏卵、ごま、落花生(ピーナツバター)、水飴、黒糖など。地域やお店によってレシピは少しずつ違っていて、白ごまを使う店、黒糖を効かせる店、隠し味にオリーブオイルを使う店など、その違いを食べ比べるのも楽しいものです。
食感はしっとりほろりとしながら、口の中でピーナッツのまろやかな甘さとごまの香ばしさがふわっと広がります。宮城菓子店も、上品な甘さで茶菓子に向くと案内しています。沖縄県公文書館によると、清明祭(シーミー)は門中墓に重詰料理や酒、花をお供えする祖先供養です。くんぺんを必ず添えるとまでは公式資料にありませんが、行事の茶菓子や手土産として店頭に並ぶことがあります。
老舗を訪ねて、店ごとの味を食べ比べ
購入できるのは、伝承二百年を掲げる新垣カミ菓子店(首里)や、石垣島の宮城菓子店など。入り数や価格は店によって異なり、公式通販では5個入りの案内があります。空港や県内の売店、オンラインショップでも手に入ることがあります。
お店によって皮の焼き加減やごまの香り、ピーナッツ餡の甘さが少しずつ異なるので、旅先で見つけたら食べ比べてみるのもおすすめです。皮のごまとピーナッツ餡の組み合わせは、店ごとに焼き加減も甘さも少しずつ違います。
ちんすこう、のー饅頭と何が違う?
沖縄の伝統菓子は姿や名前が似ていて混同しがちですが、作り方で分けると分かりやすくなります。ちんすこうは、小麦粉・砂糖・ラードの生地を焼く、餡のない焼き菓子です。これに対してくんぺんは、ごまやピーナッツの餡を皮で包んで焼き上げる点が決定的に違います。
のー饅頭は、発酵させた生地に粒あんを入れ、月桃(サンニン)の葉で蒸し上げる蒸し菓子で、仕上げに表面へ赤く「の」の字を書きます。その名は熨斗(のし)の「の」に由来するといわれ、主に冠婚葬祭に用いられます。同じあん入りの菓子でも、焼くくんぺんと蒸すのー饅頭では、食感も香りもまったく別物です。
高嶺の花だったから生まれた、タンナファクルー
くんぺんが王朝の高級菓子だったことは、もう一つの銘菓の誕生にもつながっています。沖縄事典「あじまぁ」によると、くんぺんはかつて高級品だったため、庶民が手軽に食べられる菓子として、黒糖を使った「タンナファクルー」が登場したのだとか。餡のない素朴な黒糖の焼き菓子であるタンナファクルーは軽い食感で、熱いお茶と一緒に味わいたいずっしりしたくんぺんとは「大小ふたつ兄弟のようなお菓子」と紹介されています。王朝の味へのあこがれが、庶民のおやつを生んだわけです。
沖縄の心を包んだ、素朴で由緒あるお菓子
中国から琉球へ渡り、王朝の菓子として伝えられ、いまもお茶の時間に親しまれるくんぺん。ごまの香ばしさとピーナッツ餡のやさしい甘さを味わえば、店ごとに受け継がれてきた手仕事が見えてくるかもしれません。
参考資料・出典
新垣カミ菓子店「琉球菓子」:伝承二百年、新垣親雲上淑規が中国由来の菓子に日本や近隣の製法を取り入れた経緯。
新垣カミ菓子店 オンラインショップ:くんぺん5包などの販売案内。
宮城菓子店「石垣島伝統銘菓 くんぺん」:ピーナッツ餡と煎りごま、琉球王朝御用達菓子としての案内、原材料にオリーブオイルや黒糖。
沖縄県公文書館「清明祭(シーミー・ウシーミー)」:清明祭が門中墓での祖先供養であること。
沖縄県「沖縄の伝統的な食文化の保存・普及・継承事業」:琉球王朝以来の菓子が50種類以上の多様さを持ち儀式や行事に用いられてきたこと、金楚糕(チンスコウ)や光餅(クンペン)など中国の影響が色濃く残る菓子が多いこと。
沖縄事典 あじまぁ「くんぺん」:もとは「光餅」と表記されていたこと、法事のお供え菓子や日常のお茶請けとして親しまれていること、高級品だったくんぺんに対して庶民向けにタンナファクルーが登場したこと。
Wikipedia「クンペン」:冊封使の歓待などで食べられた高級菓子であったこと、聞得大君が黒胡麻餡のクンペンを供えていたこと(同項目は沖縄県の上記資料を出典としている)。
Wikipedia「のー饅頭」:発酵生地に粒あんを入れて月桃の葉で蒸す蒸し菓子であること、「の」の字は熨斗に由来するといわれること、冠婚葬祭に用いられること。
よくある質問
- Q. くんぺんとはどんなお菓子ですか?
- ごまをまぶした皮でピーナッツ餡を包んで焼き上げた、沖縄の伝統菓子です。漢字では「薫餅」「光餅」とも書きます。しっとりほろりとした食感で、ピーナッツのまろやかな甘さとごまの香ばしさが広がります。
- Q. くんぺんとちんすこうの違いは?
- 決定的な違いは餡の有無です。ちんすこうは小麦粉・砂糖・ラードの生地を焼く、餡のない焼き菓子です。くんぺんはごまやピーナッツの餡を皮で包んで焼き上げます。発酵生地に粒あんを入れて月桃の葉で蒸す「のー饅頭」とも、焼く・蒸すの違いで食感も香りも別物です。
- Q. くんぺんはどこで買えますか?
- 首里の新垣カミ菓子店や石垣島の宮城菓子店など、老舗で購入できます。空港や県内の売店、オンラインショップで扱うこともあります。店によって皮の焼き加減やピーナッツ餡の甘さが少しずつ違うので、食べ比べもおすすめです。
- Q. くんぺんの歴史は?
- 中国から伝わった菓子がルーツです。新垣カミ菓子店は、琉球王府の包丁役だった新垣親雲上淑規が、中国由来の菓子に日本の技術や近隣諸国の製法も取り入れて琉球王朝菓子を作り上げた、と紹介しています。王朝期には、中国から訪れた冊封使の接待に供される高級菓子だったと伝えられます。


