紅型(びんがた)の歴史と魅力

紅型(びんがた)とは、型紙と防染糊を使って布を染める、沖縄の伝統的な型染めです。 琉球王国時代に育った染め物で、沖縄を代表する伝統工芸のひとつです。
この記事の要点
- 起源は資料により13世紀説や15世紀の記録などがあり、大きく発展したのは18世紀頃
- 「紅」は赤だけの意味ではなく、ビン=色彩、ガタ=模様という解釈がある
- 柄には顔料、地には染料を使い分け、色差しと隈取りで立体感を出す
- 王府御用を勤めた「紅型三宗家」(沢岻家・城間家・知念家)が技を伝えたちょうど600年と切り分けるより、資料ごとに起点が違う、と見た方が正確です。琉球びんがた事業協同組合は「早くは13世紀から起源を持つと言われる」とし、沖縄県立図書館は15世紀頃の存在を考え、李朝実録の紀白(1456年)や彩絵(1479年)を挙げています。文化庁は、大きく発展したのは18世紀ころ、としています。
色の名前で、赤だけではない
「紅型」と書くと赤い染め物を思い浮かべますが、青・黄・緑・紫など南国の色が並びます。組合はビン=色彩、ガタ=模様という解釈を紹介しています。ハイビスカスやデイゴ、魚や鳥、波や雲など、季節の違うモチーフを一枚に同居させるのも特徴です。県立図書館は、龍や鳳凰は王子・王妃のみ、黄色地は王族婦人の礼装で最も位が高い色だった、と整理しています。
かつては士族以上が身につけ、華やかな大模様は王族など特定の階級に限られました。文化遺産オンライン(重要無形文化財、1996年5月10日指定)もそのように書いています。一方で那覇型・泊型や藍型は、下位の階層にも流通した記録があります。「王族だけ」は、華やかな首里型に当てはまる話です。国の伝統的工芸品指定は昭和59年5月31日です。
糊置きから一色ずつ
工程は型染めです。組合の製作ページでは、型紙を突彫りし、圧縮した豆腐「ルクジュー」を下敷きにして、ヘラで防染糊を置きます。糊は糯米4:糠6。そのあと色差し、隈取り、糊伏せ(ビンウシー)、地染め、水洗いと続きます。黄色地には福木を使います。同じ型紙でも、色の置き方が一枚ずつ違うので、仕上がりは揃いません。
今は着物だけでなく、バッグやハンカチ、体験用のトートにも文様が入ります。首里当蔵町2-16の首里染織館すいからは、組合工房が2階にあり、糊置き済みの袋に色を差す体験を案内しています。首里山川町1-113の城間びんがた工房は約300年、16代の工房ですが、日常の見学は原則受けないと公式が断っています。那覇市宇栄原の知念紅型研究所も現役の工房です。県立博物館・美術館では企画展や収蔵品紹介で紅型衣裳が取り上げられてきました。常設で特定の一点が見られるかは、その時の展示によります。
土産店の小物は入口としてわかりやすい一方、型紙と糊の工程を知ってから見ると、色の境界のきれいさが違って見えます。強い日差しの下で映える鮮やかさは、琉球の染めが長いあいだ意識してきた条件です。
工程を順に追うと、色の置き方が見える
知念紅型研究所の制作では、白地型の型染めで約10工程、両面染めになると18以上の工程があります。主な流れを並べると次の通りです。
| 工程 | 内容 |
|---|---|
| 型彫り | 渋紙に図案を写し、小刀(シーグ)で突彫りする。下敷きは島豆腐を干したルクジュー |
| 型置き | 型紙を生地に置き、糯米と糠の防染糊をのせる |
| 地入れ | 色差しの前に、大豆を搾った豆汁を引く。顔料の滲みを防ぎ、定着を助ける |
| 色差し | 豆汁を混ぜた顔料を、つけ筆で置き、すり筆で繊維の奥へ刷り込む |
| 隈取り | 濃い色を重ねてぼかし、柄に立体感と深みを出す |
| 蒸し・水元 | 蒸して顔料を定着させ、余分な糊と顔料を洗い流す |
| 糊伏せ・地染め | 染めた柄を糊で伏せ、地を染料で染める |
| 乾燥 | 張り出して乾かし、湯のしをして仕上げ |
柄には顔料、地には染料という使い分けも紅型の特徴です。顔料は紫外線に強く色が褪せにくい一方、そのままでは生地に付かないため、豆汁がつなぎの役割を果たします。
王府御用を勤めた紅型三宗家
王国時代、首里で王府の御用を勤めたのが、沢岻(たくし)家・城間(しろま)家・知念家の三家で、「紅型三宗家(びんがたさんそうけ)」と称されました。本文に出てきた城間びんがた工房と知念紅型研究所は、このうち二家の現在の姿です。城間家は、戦後の紅型復興と後継者育成に尽くした城間栄喜の家として知られます。知念家は下儀保村と上儀保村の両家に分かれて技法を伝え、知念紅型研究所は下儀保村知念家の八代目・知念貞男が1972年に創設しました。三家で最も古いとされる沢岻家は、現在は制作を行っていません。
参考資料・出典
琉球びんがた事業協同組合「琉球びんがたとは」:13世紀起源説、王族・士族、型附。
琉球びんがた事業協同組合「琉球びんがたができるまで」:糊置きと福木、工程。
文化遺産オンライン「紅型」:重要無形文化財、18世紀の発展、階級。
沖縄県立図書館「基礎知識」:15世紀の記録、1639年の型附、黄色地。
首里染織館すいから「紅型体験」:首里当蔵の体験工房。
沖縄CLIP「紅型三宗家のひとつ『知念紅型研究所』を訪ねて 前編」:三宗家(沢岻・城間・知念)、型彫りと型置き、約10工程。
沖縄CLIP「紅型三宗家のひとつ『知念紅型研究所』を訪ねて 後編」:地入れ・色差し・隈取りから地染めまでの工程、顔料と染料の使い分け。
よくある質問
- Q. 紅型(びんがた)とは何ですか?
- 型紙と防染糊を使って布を染める、沖縄の伝統的な型染めです。琉球王国時代に育ち、ハイビスカスやデイゴ、魚や鳥など南国のモチーフを鮮やかな色で染めます。重要無形文化財に指定され(1996年)、国の伝統的工芸品でもあります。
- Q. 「紅型」の「紅」は赤という意味ですか?
- 赤だけを指すわけではありません。琉球びんがた事業協同組合は、ビン=色彩、ガタ=模様という解釈を紹介しています。実際に青・黄・緑・紫など南国の色が並ぶのが、紅型の特徴です。
- Q. 紅型はどうやって作りますか?
- 型染めです。渋紙の型紙を小刀で彫り、生地に糯米と糠の防染糊を置いてから、豆汁を混ぜた顔料で色差しをし、隈取りで陰影をつけ、蒸して定着させ、水洗いします。白地型の型染めで約10工程、両面染めになると18以上の工程があります。
- Q. 紅型は誰が着ていたのですか?
- かつては士族以上が身につけ、華やかな大模様は王族など特定の階級に限られました。龍や鳳凰は王子・王妃のみ、黄色地は王族婦人の礼装で最も位が高い色でした。一方で那覇型・泊型や藍型は、下位の階層にも流通した記録があります。


