グルメ

豆腐よう ─ 泡盛と紅麹が育てる「東洋のチーズ」、琉球王朝の門外不出珍味

編集:365おきなわ編集部
豆腐よう ─ 泡盛と紅麹が育てる「東洋のチーズ」、琉球王朝の門外不出珍味
豆腐ようを題材にしたイメージ画像(提供画像)。実物の盛り付けや色合いとは異なる場合があります。

豆腐ようとは、島豆腐を泡盛・米麹・紅麹の漬け床で数か月漬け込んで熟成させる、沖縄の伝統発酵食品です。 赤い小さなキューブが、器に並べられます。口に入れると、とろりと溶けて泡盛の香りがふわり。一度出会うと忘れられない味です。

この記事の要点

  • ルーツは中国の発酵豆腐「腐乳」。18世紀頃に紅腐乳が伝わり、琉球王府の料理人が泡盛を使って改良した
  • 王朝時代は王族・上流士族だけが口にできた「門外不出の珍味」だった
  • 味は「東洋のチーズ」。とろりと溶け、泡盛の香りが広がる
  • 10月24日は「豆腐ようの日」(とう・ふ・よ・う の語呂合わせ)琉球王朝の王族しか口にできなかった「門外不出の珍味」が、いまはお土産として気軽に手に入ります。そして本日10月24日は、「豆腐ようの日」。豆腐ようについてじっくり知るのに、絶好のタイミングです。

歴史 ─ 中国の「腐乳」から、琉球の宮廷料理へ

豆腐ようのルーツは、中国の発酵豆腐「腐乳(ふにゅう)」です。漢字では「豆腐餻」とも表記されます。琉球王国が中国・明と冊封関係を結び交易で栄えた時代、まず黄麹を使った腐乳が中国から伝来し(時期は不明)、18世紀頃には現在の福建省から、中国の冊封使によって紅麹を使った「紅腐乳」が琉球にもたらされたといわれています。

伝わった腐乳は、琉球王府の料理人たちの手で改良されました。米麹や塩、琉球ならではの泡盛を用いて、亜熱帯の島でつくれる独自の製法に仕上げたのです。こうして琉球王朝の宮廷料理として確立した豆腐ようは、琉球王朝の時代から宮廷の上流貴族の間で愛された王府秘伝の高貴な味覚で、王族や上流士族だけが味わえる高級珍味でした。中国の冊封使や日本からの賓客をもてなす歓待料理にも供されたと伝えられています。庶民には縁遠い「門外不出の味」だったのです。

作り方 ─ 島豆腐を数か月、じっくり熟成

基本の作り方はシンプルです。固めの島豆腐(木綿豆腐に近い固さの、沖縄独特の豆腐)を切り分け、陰干ししてから泡盛・米麹・紅麹・塩でつくった漬け床に沈め、4〜5か月ほど熟成させます。老舗メーカー・マキイの製造工程では、豆腐よう専用につくられた特注の巨大島豆腐をサイコロ状にカットし、塩水で洗って蒸気を当て、蒸した米でつくった米麹を塩留めして酒精を加えた特製塩麹で3〜6か月間発酵・熟成させます。仕上げに紅麹色素と水あめを加えた漬け汁で、上品な「サンゴ色」に仕上げるのが特徴です。

発酵を担う主な微生物は、紅麹のMonascus(モナスカス)属カビと、黄麹の麹菌(Aspergillus oryzae)。発酵の過程で大豆タンパク質が低分子化し、アミノ酸やペプチドに変換されて、あの独特の旨味と風味が生まれます。固い豆腐が、数か月の時を経てまったく別の食品へと変わるのです。

味わい ─ 「ウニのような風味、チーズのようなまったり」

味の表現は実に多彩です。メーカーは「ウニのような濃厚な風味、熟成したチーズのようなまったりとした味わい」といい、「東洋のチーズ」とも呼ばれます。とろりとねっとりとした食感で、口に入れると塩気と甘み、泡盛の香り、紅麹の風味がいっきに広がります。

なお、見た目は似ていても、豆腐ようと台湾・中国の発酵豆腐料理「臭豆腐(しゅうとうふ)」は別物です。臭豆腐は強烈な発酵臭が特徴の揚げ物などにする料理ですが、豆腐ようは香りも上品で、漬け込んで熟成させる珍味。匂いを警戒して遠慮する必要はまったくありません。

食べ方 ─ 少しずつ、ゆっくりと

豆腐ようは柔らかく、一口分ずつちぎってゆっくり味わうのが基本です。量は多くは要りません。お酒の肴にぴったりで、泡盛の水割りやビールと合わせるのが定番の楽しみ方です。アレンジとしては、黒胡椒をまぶす、野菜スティックやバゲットに塗ってディップにするといった食べ方も提案されています。旨みがたっぷり溶け込んだ漬け汁は捨てず、ドレッシングや料理に使うのがもったいない使い方です。

研究成果と栄養 ─ 学術でも注目の発酵食品

豆腐ようは学術研究の対象にもなっています。研究では「沖縄以外の我が国ではほとんど見られないユニークな豆腐の発酵食品」と位置づけられています。発酵食品研究で知られる安田正昭氏らの総説では、発酵で生成したペプチド(IFL、WL)が血圧上昇抑制に関わるアンギオテンシンⅠ変換酵素(ACE)の阻害効果を示し、消化酵素による処理後も高いACE阻害活性を保ったこと、高血圧自然発症ラットを用いた動物実験で豆腐よう投与群がコントロール群より有意に血圧が低下したことが報告されています。なお、豆腐ようの主要な構成成分は大豆タンパク質グリシニンの塩基性サブユニットおよびその他のポリペプチド(分子量10,500〜15,000)で、これらが食感(テクスチャー)に関係しているとされます。ただし血圧に関する知見は動物実験のものであり、人への効果を断定するものではありません。機能性を過大に期待せず、まずは味わいを楽しむものとしていただくのがよいでしょう。

栄養面では、1かけら(10g)あたり18kcal。たんぱく質0.95g、脂質0.83g、炭水化物1.91g、食塩相当量0.19gと、ひと粒の量もカロリーも控えめです。

メーカーと記念日

現在では県内に複数のメーカーがあり、浦添市に事務局を置くマキイ(商品名「うりずんの豆腐よう」)などが製造・販売しています。豆腐よう製造に関わる事業者らは「豆腐よう協議会」を結成し、食文化の継承と認知度向上に取り組んできました。その協議会が、「とう(10)ふ(2)よ(4)う」の語呂合わせから10月24日を「豆腐ようの日」と定めました。本日、まさにその記念日です。

まとめ ─ 王朝の味を、今日の晩酌に

中国から伝わり、琉球王府が磨き上げ、いまは誰でも口にできるようになった豆腐よう。赤いひと粒のなかに、大陸との交易、王朝の料理人の知恵、そして数か月の発酵の時が凝縮されています。「豆腐ようの日」の今日をきっかけに、泡盛片手にひと粒──王朝の貴人になったつもりで、ゆっくり味わってみてください。

参考資料・出典

安田正昭「ユニークな大豆発酵食品(とうふよう)の科学と技術展開」『日本農芸化学会誌』75巻5号(2001年):豆腐ようの製法の工業化と、発酵で生まれるペプチドのACE阻害活性など研究の総説。

桂正子「豆腐よう」『日本調理科学会誌』29巻4号(1996年):腐乳からの伝来、製法と味わいの解説。

雑学ネタ帳「豆腐ようの日(10月24日 記念日)」:豆腐よう協議会が制定し、日本記念日協会に認定・登録された記念日。協議会は県内7社の製造業者で2024年5月に設立。

よくある質問

Q. 豆腐ようとは何ですか?
島豆腐を泡盛・米麹・紅麹・塩の漬け床に漬け込み、数か月熟成させる沖縄の伝統発酵食品です。ルーツは中国の発酵豆腐「腐乳」で、琉球王府の料理人たちが泡盛を使う独自の製法に改良しました。王朝時代は王族や上流士族だけの珍味で、「東洋のチーズ」とも呼ばれます。
Q. 豆腐ようはどんな味ですか?
とろりとねっとりした食感で、塩気と甘み、泡盛の香り、紅麹の風味がいっきに広がります。メーカーは「ウニのような濃厚な風味、熟成したチーズのようなまったりとした味わい」と表現しています。栄養面では1かけら(10g)あたり18kcalと、量もカロリーも控えめです。
Q. 豆腐ようの食べ方は?
柔らかいので、一口分ずつちぎってゆっくり味わうのが基本です。泡盛の水割りやビールの肴が定番で、黒胡椒をまぶしたり、野菜スティックやバゲットに塗ってディップにするアレンジも提案されています。漬け汁は捨てず、ドレッシングなどに使うと無駄がありません。
Q. 豆腐ようと臭豆腐は同じものですか?
別物です。臭豆腐は強い発酵臭が特徴で、揚げ物などにする料理です。豆腐ようは香りも上品で、漬け込んで熟成させる珍味ですので、匂いを警戒して遠慮する必要はありません。