沖縄の「星の砂」——ちいさな星の正体と、竹富島のうつくしい伝説

星の砂とは、星形をした有孔虫(ゆうこうちゅう)の殻のことです。 竹富島のビーチで砂をすくい、よく目をこらすと、星の形をした小さな粒が見つかることがあります。それが沖縄で親しまれている「星の砂」です。
この記事の要点
- 星の砂は砂ではなく、有孔虫という単細胞生物の炭酸カルシウムの殻。星形の和名はホシズナ
- 生きている間は海藻などに付着して暮らし、大きさは2ミリほど
- 探せる場所は竹富島のカイジ浜、西表島の星砂の浜
- 国立公園内では採取が原則禁止。浜では観察と写真で楽しむ小瓶に詰められたお土産を見たことがある人も多いはず。でも、その正体を知ると、砂浜の景色が少し違って見えてきます。
星の砂は「生き物の殻」
星の砂の正体は、砂ではなく有孔虫(ゆうこうちゅう)という単細胞の生き物の殻です。サンゴ礁の海藻や小石に付着して暮らし、炭酸カルシウムの殻をつくります。星形のものは和名でもホシズナと呼ばれ、波にもまれて浜に運ばれた殻が、星のような姿で残ります。
仲間には、太陽のような形のタイヨウノスナ(太陽の砂)や、薄い円盤状のゼニイシもあります。ルーペでのぞけば、星だけでなく、さまざまな形の有孔虫が混ざっていることに気づくかもしれません。浜の砂の中に、小さな海の世界が広がっているようです。
ホシズナは、海藻の上で暮らす「生きている砂」
ホシズナの学名はバキュロジプシナ(Baculogypsina sphaerulata)。大きさは2ミリほどで、単細胞生物としては大型の部類です。大垣市金生山化石館の解説によると、生きているホシズナの殻の中は原形質で満たされ、星の角にあたる棘(とげ)の先から偽足(ぎそく)を伸ばして、餌を採ったり、海藻などに付着したりして暮らしています。寿命は数か月から1年半ほどと見積もられ、無性生殖では1匹の親から平均769個体もの子が生まれるという調査結果もあります。環境が良ければ一気に増えられる一方、住みかである海藻やサンゴ礁の状態が変われば、個体数も左右されます。
死ぬと原形質は分解され、炭酸カルシウムの殻だけが残ります。その殻が海の流れに運ばれて海岸に積もったものが、星の砂の浜です。同館は、竹富島や西表島の砂浜は、その多くがホシズナの殻で構成されているとしています。
出会える場所は、竹富島と西表島
八重山諸島で星の砂を探すなら、竹富島のカイジ浜(星砂の浜)が有名です。竹富町観光協会によると、港から徒歩約30分、自転車なら約15分。砂浜の岩場沿いに手のひらをそっと押し当て、ついた砂を観察するのが定番の楽しみ方です。
西表島北部の星砂の浜も、星の形をした砂が見つかるビーチとして知られています。世界自然遺産「奄美・沖縄」の公式案内でも、有孔虫の骨格である星砂を探せる場所として紹介されています。アクセスや営業状況は季節・天候で変わるため、出発前に現地の案内を確認しましょう。
なお、カイジ浜は潮の流れが速く、遊泳禁止と案内されている情報もあります。星砂探しは浜辺で、海に入るときは必ず現地の注意表示に従ってください。
竹富島に伝わる「ウマヌファ星」の物語
星の砂には、竹富島に伝わる昔話もあります。「ウマヌファ星」の物語は、白い浜に残る星形の砂の由来を語る、少し切ない伝説です。また八重山では、星砂を見つけると幸運に恵まれるという言い伝えも知られています。科学的には生き物の殻、物語の中では星の子どもたち——二つの見方が重なるところに、星砂の面白さがあります。
浜の砂は、海の生き物が「つくり続けている」
星の砂のすごさは、形だけではありません。有孔虫の殻は、島そのものを形づくる材料でもあります。科学技術振興機構(JST)の国際協力プログラム「SATREPS」では、南太平洋のツバルを舞台に、東京大学の研究者らがホシズナを育てて砂の生産を増やす試みに取り組みました。ツバルの国土の約3分の2は有孔虫の死骸からできているとされ、海面上昇に負けない島の再生に、この小さな生き物の力が期待されたのです。
八重山の浜も、同じ仕組みでできています。浜の白さは、浅いサンゴ礁で生き物たちが殻をつくり続け、波がそれを運んで積もらせる、長い時間の積み重ねです。星の砂は「拾えるもの」である前に、海の生態系が今も生み出し続けている「島の材料」なのです。
探す楽しさを、未来の浜にも残すために
星の砂は自然の一部です。浜で見つけたものは持ち帰らず、観察や写真撮影で楽しみましょう。カイジ浜では、現地のお土産屋さんで星砂を入れた小瓶などが販売されています。購入できるものを選べば、思い出を持ち帰りながら、浜の環境にも配慮できます。
手のひらに残った小さな粒をスマートフォンで拡大して撮るだけでも、旅の記録になります。次に訪れる人も「見つけた!」と喜べるように、星の砂は浜にそっと返す——そんな旅のマナーを心に留めておきたいですね。
持ち帰らないのには、ルールという理由もあります
星の砂を浜に残すのは、マナーだけの話ではありません。竹富島や西表島を含む一帯は西表石垣国立公園の区域で、環境省の西表野生生物保護センターは、自然公園法により公園内(特別保護地区および特別地域)では指定動植物等の採取が禁止されていると案内しています。区域の区分によっては、動植物の捕獲・採取や、鉱物・土石の採取に許可が必要になる場合もあります。また、竹富町自然環境保護条例でも、町に生息する動植物の捕獲や譲渡等は原則として禁止されています。
同センターは「とらない!持ち帰らない!!」と呼びかけ、法律違反として罰せられる場合があることも伝えています。区域やルールは場所ごとに異なるため、現地の案内表示に従うのが確実です。星の砂は手のひらで観察し、写真に残して浜へ返す——それが、ルールにも自然にも沿った楽しみ方です。
まとめ
沖縄の星の砂は、有孔虫という小さな生き物の殻です。正体は有孔虫の殻で、竹富島のカイジ浜や西表島の星砂の浜で見つかります。ウマヌファ星の伝説と重ねて見ると、砂粒の形にも物語が乗っています。
参考資料・出典
JAMSTEC 国際海洋環境情報センター「沖縄の海の生態系」:サンゴ・貝・有孔虫の炭酸カルシウムの殻が白い砂になること。
環境省「海とサンゴ礁のデータファイル」:有孔虫の殻とサンゴ礁の砂。
竹富町観光協会「カイジ」:カイジ浜までの所要、星砂の観察。
世界自然遺産「奄美・沖縄」西表島:星砂の浜で有孔虫の骨格を探せる案内。
沖縄県メモリアル整備協会「悲しきウマヌファ星の物語」:竹富島に伝わるウマヌファ星の伝説。
大垣市金生山化石館「フズリナでつくられた砂浜」:ホシズナの大きさや偽足・付着生活、寿命と繁殖、殻が砂浜を構成すること。
JST SATREPS「沈む島ツバルをホシズナで救う」:ツバルの国土と有孔虫、ホシズナを育てて砂の生産を増やす研究。
環境省 西表野生生物保護センター「希少な生きものを守るために」:自然公園法・竹富町条例による採取の禁止と「とらない・持ち帰らない」呼びかけ。
環境省 西表野生生物保護センター「西表石垣国立公園とは」:国立公園の区域区分と、区分ごとの採取等の規制。
よくある質問
- Q. 星の砂の正体は何ですか?
- 有孔虫(ゆうこうちゅう)という単細胞の生き物の殻です。星形のものは和名でホシズナ(学名バキュロジプシナ)と呼ばれ、サンゴ礁の海藻や小石に付着して暮らします。死んだあと炭酸カルシウムの殻だけが残り、波に運ばれて浜に積もったものが、星の砂として見つかります。
- Q. 星の砂はどこで見つかりますか?
- 八重山諸島の竹富島カイジ浜(星砂の浜)と、西表島北部の星砂の浜が知られています。カイジ浜は港から徒歩約30分、自転車なら約15分です。砂浜の岩場沿いに手のひらをそっと押し当て、ついた砂を観察するのが定番の楽しみ方です。
- Q. 星の砂は持ち帰れますか?
- 浜で見つけたものは持ち帰らず、観察や写真で楽しむのがルールです。竹富島や西表島を含む一帯は西表石垣国立公園の区域で、自然公園法により採取が禁止される区域があり、竹富町自然環境保護条例でも動植物の捕獲や譲渡等は原則として禁止されています。思い出には、現地のお土産屋さんで売られている小瓶入りの星砂を選べます。
- Q. ホシズナはどんな生き物ですか?
- 大きさ2ミリほどの単細胞生物です。生きている間は殻の中が原形質で満たされ、星の角にあたる棘の先から偽足(ぎそく)を伸ばして、餌を採ったり海藻に付着したりして暮らします。寿命は数か月から1年半ほどと見積もられています。


